セロニアス・ヒムセルフ


セロニアス・モンクは自分にとって特別なピアニストだ。
独特な不協和音やスライド奏法など、ユニークなセンスはジャズ史において唯一無二の存在である。

彼の作曲した音楽は、当時のジャズ界よりもずっと先を行っていた。
その頃評価されていたジャズメン達とは一味違うセンスを感じるのだ。
リズムや音階はアフリカや西インド諸島に近いものを感じる。
ジャズだけど、彼のルーツはその辺にありそうだ。

今、57年に録音された「セロニアス・ヒムセルフ」を聴いている。
いくつかある彼のソロアルバムの中でも、代表作として挙げられるレコードだ。

スタンダードの他に3曲のオリジナルも収録されている。
このなかの「'Round Midnight」が特に、息を飲むほどに素晴らしいのだ。

バンド編成とは違い、一音一音紡がれていく音は張りつめた空気に溶け込む。
立体的な音像たちはモンクが生み出す小宇宙。僕にはジャズという音楽を超越しているように聴こえる。
“モンクミュージック”とでもいえばいいのか・・・。

モンクは自分自身と向き合っている。ソロピアノは自分との対話なのだ。

音楽に向き合う真摯な姿勢というか、考え方はマイルスにも通じるものがある。
よく言われる「ケンカセッション」なんてあり得ない!!

そんなモンクも、あの巨漢には似合わずやわらかい感性を持っていた人なんだと思う。