ダンサー・イン・ザ・ダーク

ダンサー・イン・ザ・ダーク    監督=ラース・フォン・トリアー

Dancer in the Dark : Bjork - I've seen it all
・あらすじ
舞台はアメリカのある町。主人公のチェコからの移民セルマは息子と二人暮しをしていた。貧乏だが工場での労働は、友人に囲まれて日々楽しいものだった。だが彼女は先天性の病気で徐々に視力が失われつつあり今年中には失明する運命にあった。息子もまた、彼女の遺伝により13歳で手術をしなければいずれ失明する運命にあった。ある日、とうとう失明してしまったがそれを隠して作業していた事で工場の機械を壊してしまい、セルマは解雇を告げられる。さらに息子を心配させない為に、父に送金していると周囲に嘘をついてまで溜め続けた手術費用がセルマの大家で隣人ビルにより盗まれてしまう。ビルの家を訪ねたセルマだが、借金を苦にしたビルに「金を返して欲しければ殺せ」と銃を掴まされ発砲、発砲した事で混乱が増し手術費用を取り返す為にビルを殺してしまう。逮捕され裁判にかけられるが、ビルと「二人だけの秘密」と約束したビルの借金の事や、手術に対する不安を息子に与えないようにと、裁判で無罪を証明する事柄の一切を話すことを拒み、処刑される。

遅ればせながら「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見てみた。

主演はアイスランドの歌姫ビョークであり、素朴な演技が彼女の魂そのものという感じで素晴らしかった。

序盤から、グラグラゆれるカメラの演出に酔わされる。これはB級映画ならではの演出だろうか。
しかしこれが固定されたカメラでは、この映画の持っている狂気が出せないと思う。

主人公のセルマは、純真な子どもの心を持った女性である。ここはビョークの人柄とも重なる。

ミュージカルの妄想癖とともに、軽度の知的障害を持っているのではないだろうか?
日常的な行動を見ていても、裁判で争うときも、大人の理性で判断できていない気がした。

それを利用して、ビル夫妻がセルマを落とし入れることになる。
この映画は、冤罪や、不当な裁判が行われることへの警笛でもあると思った。

無垢なセルマに対して、社会や運命はあまりにも冷たく、残酷である。

しかし周りには仕事場の同僚キャシーや、セルマに思いを寄せるジェフや、温かく支えてくれる
すばらしい人々がたくさんいる。人間の温かさがひしひしと伝わってくる。

社会に対して、セルマはあまりに純真であり、そこがこの映画を一層切ないものにしている。

純真な心を持ち続けることのすばらしさ、それと矛盾する社会の残酷さを伝えている映画だと思った。