ある日のラジオ

監獄のように暗い部屋。ベッドの上で少年が寝ていた。
中学生になってからいじめを受けるようになり、ひきこもりになったのだ。

少年の名はミチオ。
毎日同じ日々の繰り返し。天井を見つめて、いつも自殺することばかり考えていた。
そして明日、誰も知らない山奥へ行って、首つり自殺をすることに決めた。

いつも卑劣なやり方でいじめてきたいじめグループが憎かった。
苦しんでいる自分に気づきもせず、助けてくれる人もいないこんな世の中に未練はない。

ふと、偶然つけていたラジオの声が耳に入った。
「苦しいことがあっても、あんまり深く考えずに、なるようになるさと思ってればなんとかなるよ。
あんまりマイナスに考えずに、ゆるっといこう~」

そのラジオのパーソナリティの声に救われた。もっと生きてみようと思った。

それからミチオは、部屋でラジオばかり聴いていた。ラジオというメディアは映像がない分、聴く人の
想像力を掻き立てる。ミチオはラジオを聴くことで、生きることに想像力を持てるようになった。
どんなに苦しいことがあっても、生き方次第で人生はどうにでも変えられるのだ。

そしてミチオはラジオのパーソナリティになることに決めた。
ラジオなら顔を見せなくていいので、容姿に自信がない自分でもやれると思った。
本をたくさん読んで勉強して、面白い話し方を身につけた。

上京し、全国ネットのレギュラー番組を持つことができた。
ミチオの番組は、悩み多き年頃の十代を中心に多くの若者の支持を集めた。
「あの日、俺は自殺することばかり考えていました。でも、偶然ラジオから聞こえてきた声に救われ
たんです。だから、そのラジオDJに恩返しがしたいと思ってこの職業に就きました」


監獄のように暗い部屋。ベッドの上で少女が寝ていた。
周りのプレッシャーに耐えられず、ひきこもりになったのだ。

少女の名はサエコ
毎日同じ日々の繰り返し。天井を見つめて、自殺することばかり考えていた。
そして明日、誰もいない海岸の崖から飛び降りることにした。

ふと偶然つけていたラジオの音が耳に入った。
「まわりの目なんか気にせず、ゆっくりいこう。楽しければいいんだよ~」
サエコはその歌に救われた。もっと生きてみようと思った。

アーティスト名を忘れないようにメモして、明日CDを買いに行くことにした。
出ていけるか不安だったが、胸の中ではずっとあの歌が流れていた。
次の日、サエコレコード店へ走った。不思議と周りの目は気にならなかった。
そこにあったそのアーティストのCDは全部購入した。

そしてサエコはミュージシャンになることに決めた。
ギターを弾き始めて、たくさん歌を作った。

上京し、レコード会社と契約した。
サエコの歌は、悩み多き年頃の十代を中心に多くの若者の支持を集めた。
そしてラジオのレギュラー番組を持つことになった。
「あの日、私は自殺することばかり考えていました。でも、偶然ラジオから聴こえてきた歌に救われ
たんです。だから私も、苦しんでいる人を歌で救いたいと思ってこの職業に就きました」