イレイザーヘッド


Eraserhead Part 1/9
・ストーリー
舞台はフィラデルフィアの工業地帯。モジャモジャ頭が特徴の印刷工ヘンリー・スペンサーは、着古したスーツをいつも着て異様な歩き方をする青年である。ある日、ヘンリーは付き合っている女性(メアリー・エックス)から奇妙な赤ん坊を出産したことを告白され、彼女との結婚を決意する。
その赤ん坊は異様に小さく奇形であったが、ヘンリーは驚く様子もない。こうしてヘンリーとメアリー、そして赤ん坊の新婚生活が始まるが、赤ん坊は絶えず甲高い泣き声でピーピーと泣き、その異様な声に悩まされたメアリーは家を出てしまった。
残されたヘンリーは次第に精神に破綻をきたし、部屋のラジエーターの中から現れる少女の幻影を見るようになる。少女の歌に導かれるように倒錯した世界を漂うヘンリーは赤ん坊をハサミで殺し、自身も天国へ憧れを抱きはじめるのだった…。


 
イレイザーヘッド」を観ました まるで夢を観ているような感覚に陥る、狂気的な映画でしたよ
 
主人公が住む世界のシュールな映像は、モノクロであるがゆえによりリアルに描かれています。
シュールな日常と夢想世界を描いた前衛映画ともいえるし、グロテスクなシーンはホラー映画でもあるし、
子育てや結婚についての描写も登場したりとジャンル分けしにくい映画ですね。
 
子どもや結婚についての描写は男の人生の苦悩というか、逃れられない悪夢のように思えます。
ラジエーターの向こうに見える女は、天国や欲望の象徴であり、触れると取り返しのつかない悪夢が始まる
ように思えるし、最初と中盤に一瞬出てくる男は、運命を操作している存在を暗示させます。
 
男の首が切れて始まる悪夢のシーンは「イレイザーヘッド」というタイトルの意味を象徴しているし、理解しがたい
前衛的な展開は支離滅裂な夢を観ているようで、怖いのになぜか心地いい気もする。
 
とにかくいまいち説明しがたいこの映画は、理屈ではなく感覚で楽しむべき映画なのだと思います。
そしてその解釈は、個人で何度も見るうちにだんだん分かってくるものだと感じますね。
 
冒頭に出てくる精子や巨大な隕石のような卵子は生命の始まりであり、シュールな日常や苦悩、欲望についての
描写は人間が持って生まれた性であり、夢を観ているような映像や音響は現実世界と夢想世界との接点を持た
せようとしているように思えるし、つまりこの映画は人間の一生を描いているのだと思います。
 
とにかく、観終わったあとに自分の中で何かが変わったと思える素晴らしい映画だと思いました