サクリファイス

 
冒頭から海辺のシーンが長回しで数分続き、動く油絵を観ているような美しさに目を奪われます。
 
哲学的な詩的な散文を聴いているようなセリフ、息をのむような静寂に、美しい自然の風景が目に焼きつく・・・
 
鏡や、水などタルコフスキー作品の持ち味である視覚イメージが効果的に取り入れられています。
 
核戦争がテーマになっていますが、戦争に関係するシーンはほとんどなく、海辺の美しい家や室内シーンと、
 
松林が全編に渡って写されます。
 
「犠牲を払って世界を救う」という内容は、キリストの受難がもとになっています。そして「マタイ受難曲」がテーマ
 
音楽として使われています。魔女に嘆願して、平和な日常が戻ってくる部分は、シュルレアリスティックな時間の
 
パラドックスを感じます。映像アートとしても映画のメッセージとしても、永遠のテーマが込められた傑作です
 
「核戦争のない平和な世界が戻ってくるなら、どんな犠牲を払ってもいい・・・」
 
主人公の想いと、映画に込められたメッセージは、東日本大震災後の日本人の胸に突き刺さってきます。