2010年宇宙の旅

2010年宇宙の旅  著=アーサー・C・クラーク

Space Odyssey- 2010

この小説は、有名な「2001年宇宙の旅」の続編である。

小説版「2001年宇宙の旅」では探査の目的地は土星となっていたが、この小説では
映画版に基づき、木星が舞台になっている。そしてこの小説も85年に映画化されている。
・あらすじ

ディスカバリー号の船長デイビット・ボーマンの上司である、ヘイウッド・フロイドが本作の主役で
9年前に消息を絶ったディスカバリー号を調査するためレオーノフ号に乗り込み木星へ向かう。

同じころ、レオーノフ号に先立って中国のチェン号が調査に向かったが、木製の衛星であるエウロパ
で着陸後の水の補給作業中に、生息していた生命体に襲われ全滅してしまう。

ディスカバリー号人工知能HAL9000は、チャンドラー博士により復旧され、9年前の暴走の
原因もここであきらかになる。

ボーマンは姿のないエネルギー生命体となり、宇宙空間をさまよいフロイド博士の前にも塵を使って
現れる。そして15日以内に木星系から離れるよう警告する。

他のクルーには信じられずに議論されることになるが、木星黒点が現れそれが幾何学的に増大して
いるモノリスの塊だとわかり異常に気付く。

木星ではついに核融合が始まり、小さな恒星(ルシファー)となり輝き始める。

残されたHAL9000は木星の爆発寸前にボーマンと再会し、
「これらの世界は全てあなた方のものだ。ただし、エウロパは除く。決して着陸してはならない」
というメッセージを繰り返し伝える。

終章では、20001年の世界が語られエウロパ星ではある種が原始社会を構成するまでに進化している。

2001年宇宙の旅に続き、HALの暴走の理由やボーマンのその後が語られている。
舞台である木星は太陽系最大の惑星で、その規模の大きさはやはりスケールが違う。
この小説も、次の宇宙の旅シリーズに続いていて、続編も必ず読まなければならないと思った。

クラークの小説は他のSF小説などと違い、リアリティがあって人間の余計な尺度なんかがないところ
が好きだ。宇宙について科学的にストーリーが練られているけど、さらにそれを超越した存在について
もちゃんと語られている。アシモフと並んでSF界を代表する作家である。

それにしても、クラークの頭のなかは創作意欲に溢れていたんだな~。