ENDLESS SUMMER

終わらない夏の終わりは、ボールの表面に塗られたシロップが溶けるのを待っていた。
 
宇宙空間に浸透すると白と黒の淵を彷徨いながら、再びボールの表面に溶け出す夏を見ていた。
 
海の底で眠っている命が蘇るように、輪廻転生を繰り返し、永遠に終わることはなかった。
 
水面で揺らめくゼリーを見ていると突然、強い光がやってきて白い形而上の世界に連れ出された。
 
気がつくと、青いガスの海の中を泳いでいて、飛行船の形をした生き物と戯れる夢を見ていた。
 
目覚めると広い草原にいて、空が色彩を変えながら昼夜を繰り返し、ジャイルのように回転していた。
 
コップの水が溢れ出すと足元の草が伸びてきて、無数のひまわりが咲き誇り地平を埋め尽くした。
 
遠くの森が緑に染まると、大地を突き破り眠っていた生き物が現れ、けたたましく鳴き始めた。
 
それらが奏でる交響曲は、太古より釘付けにされた八百万の霊魂に届き、永遠に止まなかった。
 
ラジオから流れるノイズは熱いコンクリートを突き破り、表層からマグマが溢れすべてを溶かした。
 
建物も人々も何もかも破壊し、文明の進歩は人類の進歩をもたらさず、焼け野原が広がっていた。
 
太陽が動きを止めジャイルが逆回転を始めると、轟音とともに空が白く炸裂し2つの爆弾が落ちた。
 
縁側でくつろいでいると風鈴が空気を振動させ、操り人形の糸が切れて意識を失った。
 
気がつくと広いさとうきび畑にいて、一人で収穫作業をしていると汗が滝のように流れ出した。
 
すると急に空を暗黒の雲が覆い隠し、スコールが空っぽのプールをエメラルドのゼリーで満たした。
 
アルミホイルの海を眺めている砂浜にたくさんの人々がやってきて、波に飲まれては消えていった。
 
残された浮き輪が太平洋を行くあてもなく漂流していると、海の淵から流れ落ちて行った。
 
流れるプールで子ども達が遊んでいると、巨大なスプーンがカプセルを一緒に掬い上げて食べた。
 
目覚めると黒いカプセルの中にいて、天井のプラネタリウムを眺めていると星が爆発し消えていった。
 
するとまた別の星が爆発しては消えていくという、ばね仕掛けの映画の繰り返しを見ていた。
 
それは宇宙の営みの中で、ばね仕掛けで動いている天体が同じ運命にあることを暗示していた。
 
花火が炸裂して消えていくまでの一瞬を切り取ると、永遠にも似た長い時間に集約されていた。
 
それが時間という概念のフレームの外に存在しているなら、星の一生など短いものなのだった。
 
そして時計の針が一周してまた同じ位置に来たとき、ボールの表面が終わらない夏を刻み始めた。
 
光が白と黒の淵で様々に色彩を変えるように、永遠にもたらされる時間と狂気は続くのだった。