出会い系

インターネットの出会い系サイトでのやり取り。
「僕は一流企業で働いています」
「えっ!あの有名な一流企業で?」
「はい。女運にも恵まれて・・・今は、彼女はいないけど」
「じゃあ今度会いませんか?」
そこで話は途切れた。

実は男は無職で、35歳になった今も親のすねを齧っている童貞の醜男なのだ。
ひきこもりであり、毎日同じ暗い日々の繰り返し。しかし最近、ささやかな楽しみを見つけた。
インターネットの出会い系サイトで遊ぶことだ。35歳の童貞だといえば誰も相手にしてくれない。
だからいつもプロフィールを偽って遊んでいる。

現実世界では、誰とも出会ったことはない。
自分は生きている意味などない、自殺しようかなどと暗い妄想にふけることもしばしばある。
しかし、インターネットだけが自分を変えて、人から認められる唯一の居場所なのだ。

その日も出会い系サイトで遊んでいた。
「僕は一流大学を出て、一流の企業に就職して・・・」
「すごいですね~!私も一流大学を出て一流の企業に就職したんですよ」
「この夏の社員旅行は楽しかったな~」
「私もこの夏、ハワイに行ったんですよ」
いつもは話が途切れるところだが、今日は途切れない。
実は、この相手もひきこもりで、インターネットだけが自分の居場所なのだ。
おまけに女だといっているが、実は男である。

「学生時代は女にもてて、今まで30人くらいと付き合ってきました」
「私も小学生の頃からもてて、バレンタインなんか、色んな人にチョコをあげました」
「僕もバレンタインはチョコの食べすぎで、鼻血を出して死にかけました」
「私は一度にたくさんの男に求められて死にかけました」
「僕もこれまで色んな女を口説いてきました」
「私も色んな人にもてすぎて、もう誰と結婚していいか分からないんです」
「僕も色んな人にもてて・・・いっそ、日本も一夫多妻制になればいいと思います」

お互いの自慢話は膨らみ続ける一方で、二人は気が滅入るばかりであった・・・。