作曲マシン

山奥の研究所。博士がなにかを作っていた。
それは、自動作曲マシンであった。

この博士、音楽大学を出てミュージシャンを志したが、泣かず飛ばず。
結局、夢をあきらめて発明家になることに決めた。

そして機械に自動で曲を作らせる「作曲マシン」を発明した。

機械の電源を入れれば、勝手に作曲をしてくれるという優れものであった。
「よし。この機械に曲を作らせて、自分のアーティスト名でCDを出すのだ」
曲がヒットすれば、印税が入り、一生働かなくても暮らしていける。博士はほくそ笑んだ。

早速レコード会社と契約し、CDを出した。
リリース期間は1ヶ月にアルバム一枚。なにしろ機械が曲を作るスピードは半端ではない。

しかし、CDはまったく売れなかった。
CDに同封したハガキのアンケートを読んでみると、そこには批判ばかりが書かれてあった。

「こんなクソ音楽、聴いているだけでイライラしてくる。一体誰が作ったんだ」
「このアルバムを聴いてから、気分が悪くなり、人生が何もかも上手くいかない」
「このCDを部屋で流したら、観葉植物が枯れた」
「この曲を聴き始めてからCDプレイヤーが操作不良を起こした」
「聴いてみたら最悪の音楽だったので、フリスビーとして遊んでいます」

博士は試しに聴いてみると、確かに最悪の音楽だった。
そこで博士は思った。やはりいい音楽は人間の人生で起こった出来事が感性に影響を与えて生まれ
るものなのだなあと。機械にいい音楽は作れない。この発明は失敗であった。

しかし待てよ、と思った。
機械が作った音楽なら、機械に聴かせたらいいのではないだろうか?
そこで博士は「作曲マシン」を工場に持って行き、機械に聴かせてみることにした。
実際にやってみると、何も聴かせなかったときよりもはるかに効率がいいことが分かった。

作曲マシンが作った曲を流した工場では生産力が驚くほど良くなり、博士には売り上げの一部が入
ることになった。その情報を聞きつけた他の工場でも「作曲マシン」を使いたいとの問合せが来る
ようになり、博士は大金持ちになったのであった。