生産者

男が瓦礫の上を歩いていた。
割れた瓦、小石、コンクリートの破片などが無数にある瓦礫の砂漠を、行くあてもなく歩き続けていた。
行けども行けども瓦礫ばかりで、灰色の大地が永遠に広がっていた。

何時間歩いただろうか。
のどは渇き、空腹で、体はボロボロだった。

しかし、相変わらず地平線に見えるのは永遠に続く瓦礫の砂漠であった。

精神的にも肉体的にも疲れ果て、男はその場に倒れ込んだ。

すると巨大なショベルカーが瓦礫もろとも男をすくいあげ、巨大なダンプカーの荷台に運んだ。
瓦礫を乗せたダンプカーは工場へ行き、巨大なミキサー型の機械の中へ瓦礫を入れた。
すり鉢型の巨大なミキサーの底では、何でも砕く鋭い刃が高速で回転していた。

ミキサーに入れられた瓦礫は、その鋭い刃の餌食になり、粉々に砕かれた。
瓦礫の中に混じっていた男も一緒に粉々になった。そして粉々の砂粒になった瓦礫はセメントや水と混ぜ
られ固まり、コンクリートになった。


男が木製チップの上を歩いていた。
木を砕いて出来た2センチくらいのチップが無数にある、木製チップの砂漠を行くあてもなく歩き続けて
いた。行けども行けどもチップばかりで、茶色い大地が永遠に広がっていた。

何時間歩いただろうか。
のどは渇き、空腹で、体はボロボロだった。

しかし、相変わらず地平線に見えるのは永遠に続くチップの砂漠だった。

精神的にも肉体的にも疲れ果て、男はその場に倒れ込んだ。

すると巨大なショベルカーがチップもろとも男をすくいあげ、巨大なダンプカーの荷台に運んだ。
チップを乗せたダンプカーは工場へ行き、巨大なミキサー型の機械の中へチップを入れた。
すり鉢型の巨大なミキサーの底では、何でも砕く鋭い刃が高速で回転していた。

ミキサーに入れられたチップは、その鋭い刃の餌食になり、粉々に砕かれた。
チップの中に混じっていた男も一緒に粉々になった。粉々になったチップは漂白され、水と混ぜられた。
そして乾かされて紙になり、出版社に運ばれ本になった。

男が海を泳いでいた。
太平洋のど真ん中なのか、泳いでも泳いでも陸地は見えず、行くあてもなく泳ぎ続けていた。
いくら泳いでも、水平線には青い海が永遠に広がっていた。

何時間泳いだだろうか。
のどは渇き、海水は体の水分を容赦なく奪っていった。もう体力は限界だった。

しかし、相変わらず水平線に見えるのは永遠に続く青い海だった。

精神的にも肉体的にも疲れ果て、男はもう泳げなかった。

すると巨大な船がやってきて、海水を男もろともすくいあげ運んで行った。
そして工場の巨大なカマの中で高温で煮詰めると、白い塩分が残った。それを天日で干すと塩ができた。