STALKER

ある日、通りを歩いていると、前方に容姿の整ったといわれる異性が歩いていた。
 
追いかけて、正体を突き止めようと思ったが、あれは夢かもしれないという忠告が引きとめた。
その証拠に、前方の異性は振り返ることはなかったし、いくら歩いても歳をとることはなかった。
 
通りはいつもと同じように、ちっとも長くはなかったが、永遠に目的地には辿りつけなかった。
 
天体の運行は速さを増し、ひとときで太陽と月がジャイルのように回転し始めた。
 
ずっと歩いていたが、前方の異性は一度も振り返ることはなく、影が伸びたり縮んだりを繰り返した。
 
何も聞こえなかったはずなのに、空から誰かの話し声が聞こえてきた。
 
その内容は自分に対する不平・不満や悪口ばかりだった。それらは自分の情緒を不安定にし、今すぐこの世界
から逃げ出したい心境になった。
 
しかし、それは前方の異性の正体を突き止めるまでは叶わないのだった。
 
やがて文明が滅び、ジャイルのように回転していた太陽と月は速さを無くした。
通りを歩いてた自分と前方の異性は急にスローモーションになり、やがて動きを止めた。
 
空から聞こえていた悪口がやみ、沈黙が訪れると、背後でパソコンが立ち上がる音がした。
振り返ると、道端にネットに接続されたパソコンが置かれていて、卑猥な画像が映し出されているだけだった。