PYRAMID

歩きながら、頭上の斜め45度にある星屑を想像して、四角錐の頂点を目指していた。
 
足を前に踏み出すごとに、時計の秒針が刻まれ、星屑のジャイルが動いているのだった。
 
男は世界を見くびったことなどなかったが、球体の歯車を動かしていることに確信があった。
 
四角錐を構成している四角柱は、呪いをかけられた墓石を古代人が運んだものだった。
 
そこには太古より釘づけにされ眠っている賢者たちの魂が、球体の四角錐を見守っていた。
 
頂点を目指して歩いていたが、頭はそこにはなく、宇宙からの電磁波が肉体を動かしていた。
 
そのことに気づく様子はなく、ただ欲望が突き動かすだけで歯車はジャイルの回転に逆らっていた。
 
斜め45度の星屑が動くごとに現実世界から離れ、風景や人々が大きさを失うのが分かった。
 
頂点に近づくごとに、異世界への支配権が手に入るが、ただそのために人類はあまりに無知だった。
 
宇宙から電磁波を飛ばしていた星屑が男との距離を測り始め、呪いが解けるのを待っていた。
 
それは時間の問題で、もう男は頂点に到達していて、世界を見くびる呪文が空気を震わせたのだった。
 
その瞬間、四角錐を構成していた四角柱が重力を失い、ゼロから逆さまに向かい溶鉱炉の中で溶け始めた。
 
世界を見くびった愚か者は、賢者たちの墓石に埋もれる悪夢を見た。