FLOWER

花瓶にストローの柔らかく結んだリボンがやじろべえのようなバランス感覚で生かされていた。
 
壊れやすいリボンは一度殺されながら、深遠から届く恩恵に出会い、時間の上に咲いていた。
 
しかし、宇宙からの電磁波は細胞を殺しながら生かし、やじろべえをロープの上から突き落とそうとしていた。
 
その一瞬が、時間のフレームの外に存在していて、アイスクリームを冷蔵庫に入れたら溶けない状態だった。
 
ストローを切って、リボンをほどいてしまえば、そこに残るのは死と時間がもたらす残酷な運命だった。
 
だからアイスクリームを冷蔵庫から出して、フレームの内に閉じ込めて切り取れば、それは美しかった。
 
その代わり、ガラス細工の中で溶けていく命を時間の外に救い出して、元通りにすることはできなかった。
 
そのために運命に抗うやじろべえの両側についている重りは、同じ大きさの抗力を手に入れて闘っていた。
 
ただ、精巧に出来た機械とは違い、細胞にはたった一つだけ不完全な部分があり、それは変わらなかった。
 
たったひとつのプログラムミスが、紙の上に引かれた線の長さを決定し、立ち向かうことはできなかった。
 
それはモニター画面に映る砂嵐が、持続的な記号によって無意味な情報を伝えることと似ていた。
 
宇宙空間を彷徨う歯車がすべての細胞に刻まれていて、相互作用で生命はバランスを保っていた。
 
結んだリボンがほどけるとき、星は命を暗黒の宇宙に燃やし、花を咲かせて輝いて散った。
 
それはどんな小さな命でも美しく、力強かった。