2010.8.14

自転車で犬を連れて、市街を目指していた。
犬は疲れてきたようだ。ゆっくりこぎながら、そろそろ辿りつけると思っていた。
空は薄暗く、正確な時刻は分からなかった。市街に着いても、あまり人はいなかった。
 
アーケードに入ると店はなく、工事中なのか、白い壁がずっと両側に続いていた。
路地を曲がると建物の入口があり、中をのぞくと薄暗い廊下がずっと続いていた。
この建物にはテナントが入っているらしい。ドアがいくつかあって、光が漏れていた。
 
犬を友人に預けて、自分は目当てのレコード店に行くことにした。
待たせるといけないので、すぐに戻るつもりでいた。しかし、案内板もなくどこにレコード店があるか分からない。
仕方がないので、ドアを開けて確かめてみることにした。
 
中をのぞくと、カラフルな照明が顔を照らし、店内には落ち着かないダンスミュージックが流れていた。
店内の雰囲気から、ここがレコード店だと思った。しかし棚を見ても、CDらしいものは置いていない。
そこに並んでいるのはDVDのような細長い形のパッケージばかりであった。
 
ここはDVD専門の店なのかと思って、ひと通り店内を歩いたらそこを出た。
薄暗い廊下を歩いて、他の店のドアを探した。次の店は、書籍ばかりが置いてあり、店内は静かだった。
何人かの客が立ち読みをしていたが、やはり人は少なかった。
 
店内を歩いてもCDらしいものはなかった。店の奥まで進むと階段があり、上の階のテナントに続いているよう
だった。その階段を上がると、前方に再びカラフルな照明が見えてきた。そこはさっきのDVD専門の店だった。
客のまばらな店内を速足で歩き、そこを出ることにした。
 
しかしそこはさっきの入口へは続いておらず、仕切りを隔てて同じフロアに別の空間があった。
前方にまたテナントが見えたのでそっちへ急いだ。そこは楽器屋で、広い店内を歩きまわると見たこともない
色々な楽器が置いてあった。しかし、楽器を見ている暇はないのでレコード店を探すことにした。
 
店の奥へ進むとそこにはたくさんのギターが置いてあった。太い柱があり、裏へまわるとそれはほぼ垂直な
エスカレーターになっていた。目の前で動くベルトコンベアに足を乗せると、自分の肩幅すれすれで中の空間
に入れて、上の階に上がっていった。
 
上の階に着くと、足元はガラス張りになっていた。下を見ると少し怖かったのでゆっくり歩いた。
床がガラス張りのその空間はプールになっていた。流れるプールや、様々なプールがあったが、そこで泳いでいる
人はいなかった。プールサイドを歩いて幅の広い階段を上がっていくと、また別のフロアがあった。
 
今まで人混みではなかったのに、そのフロアには人がたくさんいた。人混みをかき分けて前へ進むと、そこは
様々な飲食店のテナントが入っているフードコートになっていた。たくさんの人々が食事をしていたが、まったく
食欲は沸かなかった。それどころか、急に人混みの雑踏の中へ来たせいか、気分が悪くなり吐き気がした。
 
フードコートから遠ざかるようにして雑踏の中を歩いて行くと、奥に2つのエレベーターがあった。
エレベーターに乗って別の階へ行こうと思ったが、中は文字通り鮨詰め状態だった。明らかに定員オーバーなので
次来るのを待ったが、次のエレベーターも同じように鮨詰め状態だった。
 
自分と同じようにたくさんの人が待っていたので、エレベーターには永遠に乗れそうにないと思った。
犬と友人を待たせているのでいい加減戻ろうと思い、もと来た道を返ることにした。フードコートを通り過ぎ、プール
の場所へ行くと、さっきは人がいなかったのに、何人かの子供と大人がプールサイドにいた。
 
係員のような人がいて、何かの説明をしているようだった。来たときは気付かなかったが、プールの水が出る所
に10メートルくらいの、大理石でできたルネサンス時代の彫像があった。窓から外の風景を眺めると、でこぼこ
した黒っぽい岩石がたくさん転がっている荒涼とした景色が広がっていた。
 
垂直なエスカレーターを降り、楽器屋を通り過ぎDVD店を通り過ぎ、階段を下りて書店に戻ると、来たときは気付
かなかったドアがあることに気付いた。中をのぞくと、階段を上がった先に机が置いてあり、店員のような人がいた。ここはスタッフルームのようだ。
 
書店を出て薄暗い廊下へ戻ってくると、友人が携帯をのぞきながら待っていた。
外へ出ると、もう辺りは日が暮れかけていた。そんなに時間が経った気はしなかったのに不思議だと思った。
もう一度レコード店を探したかったが、今日はもう帰ろうと思った。
 
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