夢
8つの短編からなる映画ですが、脈絡がないようでいてどこかで繋がっているテーマを感じる事が出来ます。
明確なオチがあるわけでもなく、曖昧な夢の世界が描かれていますが、人間に対する警鐘のようなものも
ストーリーの中に込められています。「日照り雨」「桃畑」は子ども時代の無垢な記憶が、鮮やかな色彩で撮ら
れていて、自然や霊魂への畏怖を感じます。「雪嵐」「トンネル」は生きる苦悩や悲しみを描いています。
に対する警鐘と人類の愚かさを描いています。そして最後に「水車のある村」は自然のなかの村に生きる老人
と、村の営みが描かれます。
最初、子ども時代の未知なものに対する恐れや「畏怖」がテーマになっていますが、話が進むにつれそれが
成人の「苦悩」に変わります。そして自然を壊した人間は、退廃しきった世界で嘆き苦しむ鬼の姿に変わります。
まるで、人間の一生を辿っていくかのように、一見、関連がないように見えるそれぞれの短編が並んでいます。
もしかして最後の話は、生を終えた人間が辿りつく「天国」なのではないでしょうか?
原発事故を経験した現代の人類にとって、この映画のテーマは他人事とは思えない気がします。
途切れ途切れな「夢」だからこそ、教訓めいていない物語が、逆に恐ろしい警告に思えてなりません・・・。